お弁当の価値を考える 晃華学園「食と救い」の授業①
東京都調布市にある晃華学園中学校高等学校の中学3年生の宗教の授業では「食と救い」をテーマにした授業が行われています。今回は授業を担当されている宗教科主任の安東峰雄先生にお話を伺いました。
2024年10月取材・文N’s KITCHEN編集部
「食と救い」の授業
2024年10月某日、中学3年生の宗教の授業「食と救い」を見学しました。
これまで生徒さんたちは「何を食べたのか」「誰と食べたのか」「誰がつくったのか」など思い出に残る食事について意見交換をしてきました。また、薬物依存症における問題をサポートする施設「NPO法人日本ダルク」を通して、孤独や心の闇についても考えてきました。
見学した日は、これまでの授業をふり返りながら、食が持つ意味や価値について考えていました。安東先生は授業冒頭で、ご自身のお話を交えながら食事や食卓についての著名人の意見や研究を紹介します。
日本の家族について研究されている岩村暢子さんの著書『変わる家族 変わる食卓』からは、現代は食べることを重要なこととは捉えない「食軽視」の時代になったという分析が取り上げられ、「いのち」「生」「性」「食」などをテーマに講演を行われている助産師の内田美智子さんの講演からは、性のトラブルを抱えた子どもたちの多くは家庭にあたたかい食卓が用意されていなかったというお話が紹介されました。
安東先生は、「(家族で食卓を囲んでいる家庭の)子どもたちは何を食べているのか。大切なのはカロリーや栄養バランスだけではないよ。手づくりの料理には、『あなたが大切な人である』というメッセージが込められている。コンビニエンスストアにはたくさんのお弁当があるけど、どれもあなた一人のことを想ってつくられてはいないよね?それができるのは家族など身近な人だけだよ。子どもはそのようなことを毎日考えてはいないけれど、お弁当を食べ続けることで自分は大切にされていると実感できるのではないかな。みんなのお父さんやお母さんがあなたにお弁当をつくり続けていられることは、それだけの価値がみんなにはあるということの証だと、間接的に理解しているのではないかな。」とおっしゃいました。
最後に、大学生が高校時代のお弁当をふり返って書いた文章がいくつかスライドショーの形で紹介されました。そこでは友達にお弁当を褒められたことや、不登校だった時につくってもらったお弁当への想いが綴られていて、生徒さんたちが今の自分を客観的に見るきっかけにしたように感じました。
この先の授業では、宗教と食の関係、特に食がどのように救いをもたらすかについて学習し、生徒さんたちは家族へお弁当をつくり、その体験を通して得たお弁当への想いを綴ります。完成したものは共同通信社主催のコンテスト「弁当の日おいしい記憶のエピソード」に応募されるそうです。
共同通信社主催「弁当の日おいしい記憶のエピソード募集」
晃華学園中学校高等学校
東京都調布市にある私立女子中学校高等学校(幼稚園、小学校併設)。
カトリック女子修道会「汚れなきマリア修道会」を設立母体とし、カトリック教育・女子教育・ライフガイダンスの3つを柱とした全人教育に取り組んでいる。週1時間の宗教の時間では、キリスト教的人間観に基づく教育を行っている。
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