稲わらが世界を救う!?トキワ松学園の探究女子教育②

前編では、クエストカップ2024で吉野家企業賞を受賞した生徒さんにお話を伺いました(過去のコラムはこちら:前編)。今回は指導を担当した加藤美恵子先生へお話を伺います。
2025年1月取材・文N’s KITCHEN編集部
社会課題とどうミックスしていくか
編集部
廃棄食材を活用する企画以外にも、これまでトキワ松学園では、廃棄物の稲藁に注目した「稲藁利用による新繊維の開発」の個人探究で2つの賞を受賞された生徒さんがいるそうですね。まずはトキワ松学園の探究学習について教えてください。
加藤先生
調べ学習は、昔からどこの学校でもありました。探究というのは、調べて終わらせずにそこから一歩先の自分で設定した課題解決まで進むものです。
編集部
高校1年生にとって課題設定は難しいのではないでしょうか?
加藤先生
そうだと思います。心掛けているのは、生徒の素朴な疑問、興味、関心を否定しないで聞くことです。そして、その話の中からリサーチクエスチョン(課題)に昇華させるものを見出せるよう対話を重ねていきます。このやりとりが難しいです。
具体的には、例えば男子の話から始まり、私は面食いだと思う → 顔が格好良くても好きにならないこともある。フェロモンかも? → フェロモンって人間だけではなくて昆虫にもあるらしい → アリにもある → アリの道筋フェロモンって何だろう、という感じです。スタートは男子の話だったのに、課題はアリの道筋フェロモンの研究になります。面白いですよね。
他にも、生徒が探究の課題を見つけられるように遠足に行き、海のごみ拾いをしたこともありました。その時に見つけた風力発電をヒントに魚に対する振動の影響をテーマに研究をした子もいます。素朴な疑問から課題に昇華させていく、そして社会問題とどうミックスさせていくのかがファシリテーターの私の腕の見せ所だと思っています。

起業して、稲藁から地球に優しい衣服作りを目指す生徒も
加藤先生
食に関する探究では、稲藁の活用をテーマにした生徒がいます。きっかけは発展途上国へ寄付した衣服が、発展途上国の繊維産業の成長の妨げになっているうえ、化学繊維のため自然にかえらず海岸で山積みのごみになっていると知ったことです。このことから稲藁で地球に優しい繊維がつくれないかと思って稲藁を調べ始め、カイコの研究をしている生徒にもらったデータから絹と稲藁が似ていると分かって繊維が作れるのではないかと研究を進めました。この生徒は高校在学中に起業もしています。

編集部
個人探究だからといって一人で研究するわけではないのですね。
加藤先生
そうですね。指導する時には、生徒同士だけでなく社会とのつながりを持つためにはどうすればよいか、という意識を持てるようなアドバイスをしています。社会と接点を持ち、自分よがりにならないように、しかし、自分事としてとらえられるようにリンクさせていくことが大切だと考えています。一方で、生徒は臆せず企業へメールを送ったり電話をかけたり、こちらが驚くような勢いを持っています。
編集部
トキワ松学園の生徒さんのカラーなのでしょうか。すごいですね。何より、日本人には欠かせないお米。私たちN’s KITCHENでのお弁当作りでもごはんは欠かせません。廃棄物になる稲藁を活用できたら素晴らしいですね。
探究、思考力の育成、美術。時代に合った教育を提供しているのが強み
加藤先生
トキワ松学園では、年末に探究の発表会(トキワカップ)を行い、高校2年生から中学3年生までつながりを持たせています。運営も生徒主体で行っています。これが、生徒たちが探究の授業を楽しみにするようなしかけとなり、さらには生徒の積極性を育んでいるのかもしれません。

編集部
なるほど。最後になりますが、トキワ松学園のアピールをお願いします。
加藤先生
探究、思考力の育成、美術、がトキワ松学園の特徴です。時代に合った教育を提供しています。美術面では、学校内に絵画を多く展示して、学校生活の中で本物に触れる機会を提供できるようにしています。絵画も定期的に展示を変更しているので、生徒が飽きることがないようにしています。
編集部
定期的に違う絵画が見られるというのは魅力ですね。ぜひ文化祭などで学校へ足を運んでもらえたらと思います。


2回にわたり、トキワ松学園中学高等学校の生徒さんと先生にお話を伺いました。フードロスや廃棄食材といった課題に対し、このような持続可能なアイディアを考え出す生徒さんやそういった授業を行う先生たちがいることが、未来の食文化にとって重要なのだと感じた取材でした。
トキワ松学園中学校高等学校

東京都目黒区にある私立女子中学校・高等学校。世界を視野に、課題を発見し、多様な価値観を持つ人々とともに「思考力教育」「国際力教育」「美の教育」を柱に、未来の社会を創造する探究女子を育成していく学校。美術教育にも力を入れている。
トキワ松学園中学校高等学校ホームページ