睡眠と食事で成績アップ 睡眠の専門家に聞きました

睡眠と食事で成績アップ 睡眠の専門家に聞きました

受験勉強で夜遅くまで塾に通うお子さんをお持ちのみなさん、夕食の時間や内容に悩んでいませんか?「理想はわかるけど、なかなか実行できない…」そんな声をよく耳にします。今回は、睡眠と栄養の専門家である篠原絵里佳先生に、無理なく始められる工夫も含めてお話を伺いました。

まずは「なぜ睡眠大切か」を知ることから

「学力を上げたいなら、まずはしっかりと睡眠を取ることから」と篠原先生はおっしゃいます。質のよい睡眠が、お子さんの頑張りを最大限に活かしてくれるのです。

勉強した内容の記憶を脳に定着させ、必要な時にパッと思い出せるようにする「索引付け」は、全て寝ている間に行われています。睡眠不足のまま塾に通ってしまうと、せっかく勉強した内容が「教科書のあそこに書いてあったのに、思い出せない!」となってしまうのです。

「早く寝なさい」と言っても、子どもはなかなか動いてくれませんよね。でも、理由がわかると「やってみようかな」と思えるもの。ぜひお子さんに教えてあげてください。

小学生には9〜11時間、最低でも7時間の睡眠が必要ですが、いきなり理想を目指すのは難しいと思います。まずは今より「10分早く寝る」ことから始めてみましょう。1か月続けられたら、また10分早める。3か月で30分早く眠れるようになります。小さな一歩でも、確実に変化は生まれます。

朝ごはんで「睡眠ホルモン」を作る

意外かもしれませんが、よい眠りは朝食から始まります。朝にたんぱく質を摂ることが、実は夜の深い眠りへの第一歩なのです。

たんぱく質→セロトニン→メラトニンの流れ

朝食べたたんぱく質(トリプトファン)は、昼には「セロトニン(幸せホルモン)」に変わり、夜には「メラトニン(睡眠ホルモン)」として分泌されます。メラトニンが深い眠りをつくり、成長ホルモンの分泌を促してくれるのです。

卵かけごはん、納豆ごはん、ツナサンド、卵サンドなど、手軽なメニューでOK。ヨーグルトや豆乳も効果的です。炭水化物(ご飯やパン)と組み合わせることで体内時計もリセットされ、より良い睡眠につながります。

朝食が苦手な子には

「朝は食欲がない」というお子さん、多いですよね。実はそれ、睡眠不足が原因かもしれません。

1. まずは飲み物から(牛乳、豆乳、ヨーグルトドリンク)
2. 慣れてきたらバナナなど食べやすいものをプラス
3. さらに慣れたら卵かけごはんや納豆ごはんへ

2〜3週間続けると体が慣れてきます。焦らず、できることから始めましょう。

成長期に絶対必要な「鉄」

鉄が不足すると、せっかく朝にタンパク質を摂っても、セロトニンに変えられません。成長期の子どもは、筋肉の成長や脳の発達、女の子なら生理もあり、大人以上に鉄が必要なのです。鉄は毎食意識して摂ることが理想的です。鉄は吸収率が低い栄養素のため、こまめに摂取することが大切です。

特に朝食では卵(鉄が豊富)を取り入れ、昼食は給食やお弁当でバランス良く、夕食では赤身の肉や魚、大豆製品などを意識的に取り入れましょう。

鉄たっぷり食材(手軽さ重視)

・赤身の肉:牛肉、豚ヒレ肉、ひき肉なら赤っぽいものを選ぶ
・赤身の魚:カツオ、マグロ、さば(缶詰もOK!)
・佃煮:あさりやしじみの佃煮大さじ1杯でレバー焼き鳥1本分
・卵、納豆、厚揚げ
・冷凍ほうれん草、小松菜

ビタミンCと一緒に取ると吸収アップ

鉄は吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がグンと上がります。食後にキウイフルーツ(半分に切ってスプーンですくうだけ!)やバナナを食べる習慣をつけましょう。トマトやピーマンなど、食事に添えるのも効果的です。

細胞分裂に必要な「葉酸」

葉酸は妊婦さんだけでなく、成長期の子どもにも必須の栄養素。細胞分裂を促し、体を大きくするために欠かせません。さらに、セロトニンをつくる時にも葉酸が必要なので、睡眠の質にも直結します。

葉酸が多い食材

・青菜類
・納豆
・焼きのり(おにぎりに巻くだけで手軽)
・果物:いちご、キウイフルーツ、アボカド、マンゴー(冷凍も可)

忙しいお母さんへ:冷凍・缶詰を堂々と使おう

「ちゃんとつくらなきゃ」と思う必要はありません。実は、冷凍野菜は旬の時期に急速冷凍するので、買ってきて日数が経った生野菜より栄養価が高いことも。ビタミンCは低温に強いので、冷凍してもほとんど減りません。むしろ、ゆでるのを忘れて野菜室で黄色くなるまで放置するより、冷凍の方が栄養は残っているのです。

超お手軽メニュー

・朝:ツナマヨおにぎり+焼きのり+バナナ
・朝:納豆ごはん+インスタントみそ汁に冷凍ほうれん草
・塾に行く前:豆乳+バナナ(脳のエネルギー補給+鉄分+葉酸)
・夜:あさり缶で炊きこみごはん(朝晩2回で鉄分たっぷり)

夜の食事、現実的な工夫

理想は寝る3時間前までに食事を終えること。消化吸収には3時間かかり、その間は眠りが浅くなってしまうからです。でも塾から帰るのが9時過ぎでは難しいですよね。

時間がない時の対策

・塾でお弁当を食べる日は、そこで夕食を済ませる
・塾のお弁当は、揚げ物や天ぷらなど、油が多いものは避ける(唐揚げ程度ならOK)
・帰宅後に食べる場合は、おかゆ、うどん、雑炊など消化の良いものに
・タンパク質は鶏肉や白身魚など消化しやすいものを選ぶ

塾のない日は、家族そろって食卓を囲む時間を大切に。心の健康や食欲の変化にも気づけます。

光のコントロール:今日からできること

夜9時以降は、体が「そろそろ寝る時間だよ」とメラトニンを分泌し始める大切な時間。この時に明るい光を浴びると、体が「朝だ!」と勘違いしてメラトニンの分泌が止まってしまいます。

・部屋の照明を暗めに設定する
・コンビニに寄るなら塾の前に(コンビニの照明はかなり明るい)
・スマホ、ゲーム、SNSは朝にチェックする習慣を

スマホを我慢するのは大人でも難しいもの。「なぜダメなのか」を子どもと一緒に理解すると、協力してくれると思います。

家族みんなで、一つずつ

お母さんは睡眠で美肌効果(高い化粧水より効果的!)、お父さんは仕事の効率アップで残業減、子どもは成績向上と免疫力アップ。睡眠改善は家族全員にメリットがあります。

「あれもこれも」と欲張らず、家族で話し合って一つだけ選んで始めてみましょう。

・10分早く寝る
・朝に卵を1個食べる
・夜は照明を暗くする

などなど…

一つの習慣が変わるだけでも、何かが変わります。できたら次の一つへ。そんなペースで大丈夫です。完璧を目指さず、できることから一つずつ。子どもの成長と、家族の健康のために、今日から小さな一歩を踏み出してみませんか?


篠原絵里佳先生

株式会社Food Smile ニュートリションプロフェッショナルアドバイザー
管理栄養士、睡眠改善インストラクター、上級睡眠健康指導士
長年の臨床経験に基づき、抗加齢医学と栄養学を融合させた生活習慣を実践的でわかりやすく発信することを得意とされています。また、栄養カウンセリングを積む中で睡眠の重要性に気付き、日本睡眠学会専門医の指導の下、睡眠改善インストラクター、上級睡眠健康指導士を取得、栄養・睡眠の両面からアプローチする独自の指導体系を確立されました。2021年には、これまでの多角的な活動が評価され、日本抗加齢医学会より褒章を受章されています。

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