養蜂を通して社会貢献 聖学院みつばちプロジェクト①

養蜂を通して社会貢献 聖学院みつばちプロジェクト①

その1 聖学院オリジナル商品ができるまで

みなさんは、はちみつがどんな風につくられているのか、ご存じですか?また、はちみつに色々な種類があることをご存じですか?

東京都北区にある、聖学院高等学校には「聖学院みつばちプロジェクト」という、有志の高校生によるプロジェクトがあり、約20万頭のミツバチを飼育しています。そこで採集した非加熱、無添加のはちみつは、一般向けに販売もしています。2020年には合同会社And 18’sを立ち上げ、さらに2022年には、はちみつを使ったジンジャーエールの開発、商品化も行いました。

過酷な状況下でも行われる内検

まず最初に見せていただいたのが、内検(ないけん)と呼ばれるミツバチ(セイヨウミツバチ)の巣をチェックする作業です。養蜂のための装備を貸していただいたものの、周りをブンブンと飛び交うハチたちにおよび腰になりながら取材をスタートしました(笑)。巣箱が置かれているのは聖学院高等学校の校舎の屋上。現在は7つの巣箱が置かれています。1群あたり2~3万頭、計15~20万頭のミツバチがいるそうです。

校舎屋上での内検の様子。たくさんのハチが飛んでいるのが見えますか?

内検は、巣箱を開けて、中の状況をチェックします。春から夏にかけては、週2日のペースで行われるそうです。内検の目的は大きく次の2つです。

・女王バチを見つけること
・採蜜できる巣枠を探すこと

ミツバチは群をつくって活動し、その群れに1匹ずつ女王バチがいないと群としてなりたたないそうです(聖学院高等学校では、巣箱1箱ずつが群になっている状態なので、7群いるということになります)。巣箱に女王バチがいない場合、他の巣箱から、女王バチ候補の幼虫を移す作業を行います。 また、採蜜できる巣枠を見つけたら、それを抜き取り新しい巣枠を入れます。

とり出した巣枠。ところどころ蜜蓋がされています。

ミツバチの雑学

ミツバチの巣には、女王バチ(メス)、働きバチ(メス)、雄バチ(オス)がいます。花の蜜を集め、巣に貯蔵したり巣や幼虫のお世話をしたりするのは働きバチの役目、雄バチは女王バチと交尾をする役目、女王バチは卵を産み続ける役目と、それぞれ役目が分かれています。働きバチは集めてきた花の蜜を巣に戻って吐き出します。花の蜜にハチの唾液や酵素が混ぜ込まれ、変容したものがはちみつです。


取材させていただいた日は、気温は30℃にせまる暑い日でした。養蜂用の防護服を着ての作業はさらに暑そうで、大変な作業だと感じました。また、スズメバチや台風の対策もミツバチを守るために欠かせない作業だそうです。

ハチたちは、学校付近の飛鳥山公園・六義園・旧古河庭園などに咲く花から蜜を集めてくるそうで、その時期は特別餌を与えなくてもよく、秋や冬になって周囲に餌が少なくなってくる時だけ樹液や取りこぼしたはちみつを巣箱に置いてあげるそうです。いわゆる生き物のお世話とはずいぶん違ったイメージですね。

はちみつの抽出と製品化

巣枠にある程度蜜がたまったら巣箱から取り出し、はちみつの抽出の準備を行います。まず、蜜蓋(みつぶた)といって、蜜がたまったところにみつばちがつくった蓋をナイフで削りとります。それを巣枠ごと遠心分離機にいれて、はちみつを抽出します。聖学院高等学校にある遠心分離機は手動なので、生徒たちが交代でハンドルをぐるぐる回してはちみつを抽出します。

遠心分離機。巣枠が2枚入ります。

抽出作業は日を決めて行い、1日で20~30枚の巣枠を処理します。1回に2枚ずつ遠心分離機に入れて、ハンドルを25回くらいまわします。1日をかけて行う、筋肉痛必須(!)の作業だそうです。

「遠心分離機には電動のものもあるのですが、金額的になかなか手が出ませんし、僕たちが手でやることに意味があると先生に説得をされて手動のものを使い続けています(篠原さん)」 その後は、あえて加熱をしないで(その理由は次回を見てくださいね)ろ過を施し、ゴミを取り除いた後、煮沸消毒した瓶に詰めていきます。最後にラベルを貼って商品の完成です。この一連の作業は家庭科室で行われます。帽子、エプロン、マスクを必ずつけ、家庭科室に私物を持ち込まないようにするなど、衛生管理を徹底しています。

蓋や瓶の煮沸消毒も生徒たち自ら行っています。
瓶詰の作業
生はちみつCraft Honey
ジンジャーエール

出来上がった商品の生はちみつ「Craft Honey」は、PTAなど校内関係者に加え、都内や埼玉県などの店舗に置かれ、一般のお客さんにも販売されます。また2020年より、Pay ID(旧BASE)内の「聖学院みつばちプロジェクト(https://crafthoney.thebase.in/)」でも販売しています。非加熱のはちみつは国内で流通しているはちみつの0.08%と言われていて、とても貴重なものだそうです。

また、現在聖学院みつばちプロジェクトでは、はちみつ以外の商品(はちみつ入り)もつくっています。形が悪かったり、傷があったりという理由で市場に出すことができない「規格外作物」を使って、桃、りんご、バナナなどのジャムをつくりフードロス問題とも向き合っています。

2021年には、はちみつを使ったジンジャーエールの開発と商品化も行いました。はちみつを通して、学校がある北区の活性化をしようと始まったプロジェクトですが、レシピ開発、資金集め、製造してくれる企業探しなど、実現するまでにたくさんの困難があったそうです。試作15回以上、試飲会8回を経て、1年をかけてつくられたジンジャーエール「青天」は「子どもでもごくごく飲めるジンジャーエール」というコンセプトのもと、とても飲みやすい味に仕上がっています。売れ行きも良く、売り上げの一部はタイ山岳少数民族の子どもたちが暮らしている「タイメーコックファーム」に寄付しているそうです。

他の商品についてもその利益は次の商品製造に使われたり、寄付をされています。利益を上げることが目的ではなく、活動を通して社会に貢献することを目的としているそうです。

その活動が素晴らしいのはもちろんですが、はちみつもジャムもとても美味しいので、みなさまにも機会があればぜひ味わっていただきたいです。生はちみつは、さらりとした甘さが本当においしいです。バナナジャムは、さらりとしているのに、バナナそのものを味わっているような濃厚さでした。

聖学院中学校・高等学校

東京都北区にある私立男子中学校・高等学校。キリスト教精神に基づく人間教育、学習指導、体験学習が教育の3つの柱となっている。部活動とは別に様々なプロジェクトがあり、生徒たちはプロジェクトへの参加を通して様々な体験をし、学ぶことができる。
聖学院中学校・高等学校ホームページ

カテゴリ
  • N's KITCHENをtwitterで送る
  • N's KITCHENをLINEで送る
  • N's KITCHENをfacebookで送る

養蜂を通して社会貢献 聖学院みつばちプロジェクト②

こちらもおすすめ