スープジャーの秘密、うかがいました vol.1
お弁当に温かいスープやお味噌汁が持っていけるスープジャー。大人も子どもも、一度使い始めると欠かせないお弁当アイテムになるのではないでしょうか。その機能や歴史、活用方法について、サーモス株式会社 社長室 ブランド戦略課 小長井 早紀さんにお話を伺いました。
2022年5月取材・文N’s KITCHEN編集部
冷めない魔法の容器、その機能の秘密と歴史
Q. サーモスの歴史について教えてください
サーモスは、ドイツ発祥のブランドです。1904年に世界で初めてガラス製魔法びんを製品化しました。最初は真空二重のガラス容器を金属の容器で覆ったもので、革製のケースに入れて持ち運んでいました。保温機能はあるものの、重く割れやすくもありました。
そして1978年、日本酸素株式会社(現:日本酸素ホールディングス株式会社)が、世界初の高真空ステンレス製魔法びん『アクト・ステンレスポット』を製品化。『割れない』という、ガラス製の弱点を克服した新たな価値を提案することになりました。このステンレス製魔法びんの開発を経て1989年には日本酸素がイギリス、アメリカ、カナダのサーモス事業を買収し、サーモスのブランド名でステンレス製魔法びんを発売していくことになります。
Q. サーモス製品の保温、保冷の仕組みについて教えてください
ステンレス製魔法びんはステンレスの二重構造の容器になっており、外びんと内びんの間は高真空状態になっています。これは宇宙空間と同じで、熱を伝える気体分子がほとんどないため、熱移動による放熱を防ぎます。また、内びんの外側に放射率の小さな金属箔を巻きつけることにより、熱放射による放熱を防ぎます。これが、ステンレス製魔法びんの高い断熱効果の秘密です。
Q. 二重構造内部の真空状態は、どのように作り出しているのですか
真空構造は、高真空状態の中で容器の底をふさぐことで作られます。図のように封止穴の上に封止材をのせ、真空炉という炉の中に入れて、加熱して封止材を溶かします。すると、穴がふさがれ、二重構造の内部だけ真空状態が保たれた形になるのです。
Q. スープジャーが最初に発売されたのはいつですか
食品を入れる魔法びんのフードジャーは、サーモス設立当初からあり、1930年代のイギリスの広告にも登場しています。サーモスが国内で真空断熱スープジャー(以下、スープジャー)を発売したのは2009年です。
2009年当初はステンレス製容器に直接スープを入れることに抵抗感を持つ方もいらっしゃると考え、プラスチック製の容器にスープを入れて、それをステンレス製魔法びん構造の容器に入れる、という二重構造になっていました。2011年には現行品に近い、ステンレス製魔法びん構造の容器に直接スープを入れる仕様になっています。その後、2019年にクリックオープン構造を採用。スープの温度が下がることでスープジャー内部が負圧になり、蓋が開きづらくなるので、開けるときに圧力を抜く形式を取り入れました。色や形などもユーザーの声に応える形で変化してきています。
Q. スープジャーが普及したのはいつ頃ですか
2011年~2013年頃を第一次スープジャーブームと位置付けています。スープジャーを扱うレシピ本も多く出て、たくさんの方が使うようになりました。具材を鍋で煮立たせてすぐスープジャーに入れ、煮込みをスープジャーで行って仕上げる『保温調理』ができることも話題になり注目されました。そして、最近では外だけでなくお家でも利用いただくなど使用シーンが広がっています。
Q. スープジャーのサイズ展開について教えてください
サイズは500ml、400ml、300mlの3サイズが主流です。2021年には200mlを発売しました。お弁当にちょっとお味噌汁をつけたい時や、ヨーグルト、デザートなどを持っていくのに便利なサイズです。ランチバッグに入るサイズというのも、おすすめポイントです。
Q. 一番売れているサイズはどれですか
サーモスで1番人気のサイズは400mlです。具だくさんスープを入れるのにちょうど良いようです。また400mlだとこれ1つだけでランチとして成立する量、というのも人気の秘密なのかもしれません。500mlですと大盛の牛丼も入る大きさです。ご自身の食べる量に合わせて選んでください。最近は白やダークカラー、カーキなど男女問わず使えるカラーが人気です。
サーモス製品の中で、スープジャーの歴史は比較的浅いのですね。にもかかわらず、多くの人が使っていて、人気の高さがうかがえます。次回は、スープジャーの効果的な使い方について、教えていただきます。
参考文献:サーモス株式会社ホームページ(https://www.thermos.jp/)