ニチレイのお弁当シリーズについてうかがいました②
お弁当づくりの強い味方、冷凍食品。「お弁当にGood!®」シリーズを展開されている株式会社ニチレイフーズ 家庭用事業部 家庭用商品グループリーダーの藤井 宏之さんに開発のこだわり、自然解凍のヒミツ、お弁当での活用方法を伺う第2回です(過去のコラムはこちら:第1回)。今回は自然解凍OK商品の秘密について、教えていただきます。
2023年2月取材・文N’s KITCHEN編集部
自然解凍のヒミツは、アセロラ濃縮果汁
2013年には自然解凍できる商品が発売されていますね。朝冷凍庫からそのままお弁当箱に入れられるというのが本当に便利なのですが、なぜ加熱しないで持っていけるのでしょうか。
現在(2023年3月)「お弁当にGood!®」シリーズでは5種類の商品が自然解凍可能です。自然解凍はお弁当とすごく相性が良いです。例えば「夕飯のおかずが自然解凍できるようになりました」となっても、消費者にはあまり響かないですよね。お弁当だからこそ求められる機能です。
お弁当は、つくってから食べるまでに通常数時間空きますので、その間におかずが傷まないようにする、端的に言えば、菌を増やさない、というのが絶対条件です。一般的には食酢や、食品添加物のクエン酸、ビタミンCなどを添加することで、菌の増加を緩やかにすることができます。弊社では天然ビタミンCが豊富なアセロラ濃縮果汁(アセロラはレモンの約34倍のビタミンC含有)を加えることで、自然解凍しても増菌しくにい商品にしています。アセロラ果汁は味のバランスを崩すことなく、美味しさも維持できます。可能な限り食品由来のものを使用した方が安心につながると考え、アセロラ濃縮果汁を使用しています。
本当ですね!たしかに原材料名に「アセロラ濃縮果汁」とあります。自然解凍OKのものとそうでないものがあるのはなぜですか。
アセロラの静菌作用、抗菌作用は今、世界でも注目されています。「クリーンラベル」といって、何を使っているか一目瞭然、というのが評価され、その中で添加物使わないものを選ぶ傾向にあります。日本もそういう流れになってきています。ニチレイは1960年代からアセロラを取り扱っていますので、その強みを生かしています。
自然解凍ができるものでも、じゃがいもや小麦粉などデンプンが含まれているものは電子レンジなどで加熱した方が本来の食感になります。デンプンの種類にもよりますが、約60℃を超えるとα化(糊化)して美味しい状態になるためです。自然解凍では60℃には到達しないので、美味しく召し上がっていただけるよう様々な工夫をしています。今後も味や食感にこだわりながら、自然解凍できる商品のラインアップを検討していきたいと思っています。
お話を伺って、一つひとつの商品にすごくこだわりを持ってつくられていることがよくわかりました。ひとつの製品が世に出るまでに、どういったプロセスがあるのでしょうか。
企画から商品化までの期間は短いもので半年、長いもので約10年かかるものもあります。前回ご紹介したコロッケのように研究に時間を要することもありますし、製造ラインを一からつくることもあります。一般的には商品企画をしたらまずは手づくりで試作を行いチェックをします。そこでうまくいったら、次は工場で大量生産できるかをチェックし、そしてどのくらいのコストで生産できるのかを検討します。すべてに妥協できないので、企画が商品化できないことは多々あります。何度も軌道修正しますし、修正した結果、企画時には良い意味で予想もしなかった方向の商品になることもありますよ。
また手にとってもらいたいから、おいしさにこだわる
商品の安心、安全、そしておいしさにこだわられているからこそ、時間がかかるのですね。
安全と安心は全く別の言葉です。安全とは、理化学的に証明されていて、データに裏付けされたことを言います。ただ、どれだけ安全といっても、安心していただけない方は多くいらっしゃいます。いかに安心感を持って選んでいただけるかにもこだわっています。安全だと立証されている添加物も、天然由来のものに切り替えたほうがより安心していただける場合もあります。このあたりも考えて開発をしています。
おいしさにもとてもこだわっています。新型コロナウイルスが蔓延し、内食需要が増えて、冷凍食品が注目されました。メディアでも取り上げられ、利用者がすごく増えました。冷凍食品を何年かぶりに食べて「こんなにおいしくなったんだ」と感じ、その後も便利に使っていただいている、という話も聞きます。おいしくなかったら、また使ってもらえなくなったり、食卓に上げてもらえなくなったりするので、これからもおいしさにこだわっていきたいです。
日頃商品開発のための情報収集はどのようにされていますか。また、心がけていることはありますか。
週末はデパ地下で買い回りをして、食の情報をインプットをすることが多いです。また、SNSで商品の評判を頻繁にチェックしますね。生活者の生の意見がダイレクトに書かれていますから。SNSには正しくない情報もあるというフィルターを自分の中に持ったうえで、めちゃくちゃエゴサ―チをして、参考にしています。また、私は調理師の免許を持っているので料理をして家族や友人にふるまったりもしていて、その中で色々な発見があります。
開発者の方たちの食への感度が高いからこそ、おいしい商品ができあがるのですね。次回は、お弁当に使いやすい商品について、教えていただきます。
参考文献:株式会社ニチレイフーズホームページ(https://www.nichireifoods.co.jp/)